Facebookに“読書文化の普及に貢献するため本の紹介にチャレンジする”という企画行事があります。参加方法は好きな本を1日1冊、7日間投稿するというものです。私は大学の先輩で元富山医科薬科大学教授の小泉先生のお誘いにより企画に参加しました。
通常、本など読みっぱなしですが、人様に紹介するとなれば少々責任とミエが働いて、読み返して深く理解しようとするものです。それが自分のためになりました。では一週間のチャレンジをご紹介いたします。
チャレンジ1日目
チベット旅行記(全五巻) 河口慧海著
仏教の原典を求めたいという求道精神から、あらゆる困難にめげず鎖国のチベットに単身入国を果たした仏僧「河口慧海」の旅行記。明治期にヒマラヤ山系を踏破した冒険譚だけでなく、チベットの風俗・習慣等を活写している(それらがとても面白い!)。本が出版されているだけでなく、青空文庫によりインターネットでも見られます。
チャレンジ2日目
コロナウイルスに対するPCR検査の意義(現役医師の解説)
本ではありませんが、いま話題のPCR検査の有用性と限界を知るYoutube情報です。なお、このURLは2月26日時点の情報なので、コロナウイルス検査を受けるべき条件は6月現在変わっています。しかし、医師が指摘しているように、PCR検査の解析は確率論による数理統計学(高校生にもわかる数学)ですから医科学的本質は変わらないと言えましょう。
下の画面をクリック。
https://www.youtube.com/watch?v=cmI_6UGHXRI
なお、島田眞路山梨大学長は、「PCR検査不足は日本の恥だ」と言っています。山梨大学の医学部と付属病院では、どこよりも早くコロナ対応に取り組み、率先垂範で学内・医療体制を整備、PCR検査のためのドライブスルーを大学構内に設けるなど、先取、果断に取り組んでいた。その実績から上のような過激な発言をしたのだろう。PCR検査の評価には複眼的な視点が必要なのでしょう。
チャレンジ3日目
常異気象と人類の選択 江守正多著
地球温暖化は化石燃料を燃やすことによる炭酸ガスの増加と強い相関ありーーこれが世界の主流で、気象学者である著者江守氏もその一人です。わたしは、スェーデンの少女「グレタ・トゥーンベリ」がヒステリックに叫んでいる環境保護にやや違和感がありますが、経済最優先のトランプ大統領に対しても不信感を抱いております。
チャレンジ4日目
マオーー誰も知らなかった毛沢東――(上下巻) ユン・チアン著
日本語教師として中国に赴任中に読んだ、毛沢東の実像を赤裸々に描いたノンフィクション長編です。民主主義と少数民族への弾圧を強行する独裁者習近平の原型を見る思いがします。しかし、毛沢東に対して『建国の英雄』ではなく『恐怖の独裁者』であると決めつけている著者の論調は、『マオ』がストーリーであってヒストリーではないという、批判もあります。
チャレンジ5日目
韃靼疾風録 司馬遼太郎著
九州平戸藩に漂着した韃靼のお姫様を、藩士(主人公)が、故国へ送り届けるところから物語が始まる。韃靼(ダッタン)人とは、女真族(現代中国では「満州族」と呼ばれる)で清王朝を建てた北方民族のことです。司馬遼太郎は、李自成の反乱で混乱する明王朝に乗じて侵入した清軍との戦いなど史実を織り込んで楽しい読み物に仕立て上げており、「蒼穹の昴」など中国の近代史をテーマにした浅田次郎の作品の先駆けといえるでしょう。
チャレンジ6日目
「第三の男」は、英国作家G・グリーンが映画のために脚本を執筆し、後に小説にしたものです(早川文庫)。しかし、小説より1950年に大ヒットしたキャロル・リード監督の映画の方が優れています。「名作映画は、人類にとって最高の総合芸術である」は、日曜洋画劇場の案内人・淀川長治さんの名言ですが、この映画はまさにそれに当たります。
ニヒルな悪役を演じたO・ウェルズが異彩を放っています。その悪役の情婦が、彼女に横恋慕した男を演じるJ・コットンを無視して去っていく、枯葉舞うウィーンの墓地でのラストシーンをツイターのBGMとともにご覧ください(下のURLをクリック)。
https://www.nicovideo.jp/watch/sm15787095
【蛇足】女に捨てられた男が、タバコに火を点け、マッチ棒を投げ捨てた所作、その気持ちが分かるな・・・。