1 国境の町

中国の国境の町

 中国と陸地で国境を接している国は14か国である。私が訪れた国境の町(地方)は、ロシア、北朝鮮、ベトナム・ラオスと接している4か所であった。

 

黒河 

  ~~遙かなる北満の彼方~~

黒龍江の黒河市
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 日本語教師8年、語学留学生4年、計12年の中国生活の最後を飾る旅で、2018年7月15日に大連駅からから黒竜江の河岸の町『黒河市』へと向かった。

 車窓から眺める大地は、ハルビン駅を過ぎてから徐々に荒涼としていき、所々に池塘があった。やがてトウモロコシ畑がえんえんと続いた。と、水田のような植生が見える。黒河一帯は世界中で稲作ができる北限の地である。長江流域を原産地とする亜熱帯植物『米』は、品種改良でこんな寒冷地でも栽培が可能になったのだろう。

 大連からハルビン経由で黒河へは、夜行寝台列車で車中二泊の旅程で、ロシアとの国境の街『黒河市』についた。黒竜江の対岸は『ブラゴヴェシチェンスク市』であり、黒河市内でもロシア人観光客がよく見受けられた。

 

 長白山(北朝鮮名:白頭山)

長白山と天池
画像をクリックすると拡大される。天池の中央に国境線が引かれている

7月13日から四日間の旅程で中国東北部の名山『長白山』へ旅行した。吉林省にある長白山の標高は2,500m程度で、富士山より約千メートル低いとはいえ、緯度的には本州の最北端と同位置にあるので、かなり寒かった。

天池登山ルート
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『白河駅』から車を乗り継ぎ、歩いて『天文峰』まで数百メートルの地点に達した。

登山の順番を待っていると、急に強風と共に雹(ひょう)が降ってきて一気に冷え込んだ。寒さに凍えながら頂上にたどりついて『天池』を眺めると、濃霧に閉ざされてなにも見えない。15分後にやや霧が晴れてきて天池が薄ぼんやりと視界に現れた。これ以上留まると凍え死にしそうだったので下山した。真夏にもかかわらず、これが北国の山の気象というものであろう。

 

下山の途中に『長白瀑布』を見物した。滝そのものはさほど大きくなかったが、背景が雄大で見応えがあった。

 

丹東

北朝鮮との国境の丹東市
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拉致問題、核開発、三代目の金正恩総書記など北朝鮮に関する報道が多いが、実際の北朝鮮は私の生活には無関係な遠い国に思える。留学中の大連市からバスで4時間、北朝鮮と国境を接している『丹東市』へ同学の友人と三人で旅行した

 丹東の町を歩くと、商店の看板には朝鮮文字の『ハングル』が書かれており、朝鮮の雰囲気があふれていた。

 

■ 遊覧船で鴨緑江を往く

 川の一方、こちら中国側には、丹東市の高層ビルが林立しており、もう一方の北朝鮮側には原野と所々に畑と工場が垣間見られる程度で、両国の経済的格差が歴然としている。

鴨緑江には両国を結ぶ二本の橋があった。一本は中朝の交易に使われている現役の橋で、もう一本は、朝鮮と満州を支配した日本が1941年に架けたものだが、1950年の朝鮮戦争でアメリカ空軍の爆撃機により破壊され、橋桁だけが残っている。ここが『断橋』と命名され、観光名所になっている。

 丹東市の民族構成は、漢族が一番多く、その他に満州族、モンゴル族、回族、朝鮮族、シボ族である。この地帯はかつて、清帝国の支配者『満州族(女真族)』の故郷の一部となっており、満州族が総人口の23%を占めているという。

  

シーサンパンナ(西双版納)

熱帯気候のシーサンパンナ
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1,900mの高原地帯にある『昆明市』から飛行機で1時間一挙に熱帯『シーサンパンナ』に到着した。一山超えると、ミヤンマー、ラオス、ベトナムであるが、山岳にはばまれているので外国は見えない。

望天樹を結ぶ空中走廊
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■『空中走廊』を歩く

望天樹と呼ばれる高木を鉄索とロープで結ぶ総延長2.5km走廊があった。両手でロープを握りそろそろ歩くと吊橋が揺れ、俯くと底板の間から千尋の谷を見ているような恐怖感で、脚がすくむ。

 この空中吊橋は、植物研究者が望天樹の科学的調査のために造ったものが、観光の目的に転用されたという。熱帯雨林の大ジャングルの中を「空中散歩」できる魅力があり、観光地としてはとてもユニークだった。