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毛沢東の伝記

『マオ 誰も知らなかった毛沢東』

(原題:Mao: The Unknown Story)

 

 この書評をWikipediaから抜粋して要約する。

 本書はユン・チアンとジョン・ハリデイの夫妻が2005年-06年に、世界各国でほぼ同時に刊行した毛沢東の伝記。

 毛沢東は青年時代に国民党に入党し、共産党に入ってからは卑劣な手を使って党を乗っ取り、アヘンを密売し、長征では軍を壊滅状態に追いやり、抗日戦争にはほとんど参加しようとせず、中国を征服すると7000万人を死に追いやった、自己中心的な良心のない人間だった。また、農家に生まれた毛沢東は1949年に権力の座に就いたが、農民たちの福祉にほとんど関心を示さなかった。農業の余剰分を産業支援と反対派への脅しに使おうとした毛の決定は、大躍進政策の結果としての大量殺人的な飢饉をもたらした。飢饉は中国国内の穀物不足が明らかになった時にすら穀物輸出が継続されたため、より過酷なものとなった。

 

 インターネットを検索したら、ある新聞記者(「おぐにあやこ」氏)がこの本の感想をこう述べている。

 ーー私は、この本を読んでいて、読書として楽しくなかった。こんなに長い本なのに、読んでいる中身は常に「毛沢東は女にだらしなく、勇気もないくせに権力ばかりほしがり、他人を陥れることばかり考えていて、毛沢東の偉業とされているものはたいてい後から作られたニセの歴史で、この男のせいで、あの人も、この人も、名もなき大衆も残酷な方法で殺された」ということばっかり、と読めてしまう。必要以上に「毛沢東憎し」の感情がにじんでしまっているからか。

 

  このように、ユン・チアンとジョン・ハリデイは本の表紙にある表現を借りるなら、毛沢東に対して『建国の英雄』ではなく『恐怖の独裁者』であると赤裸々に描いていますが、「歴史叙述と歴史分析を区別すべき」であり、『マオ』はストーリーであってヒストリーではないという、批判もあります。

 

 以下は、私がこの本を読んだ感想文です。ご興味のある読者はpdfをクリックしてください。

 

毛沢東(ユンチアンのマオ).pdf
PDFファイル 785.4 KB
河口慧海の「チベット旅行記」

河口慧海の『チベット旅行記』

 日本語教師仲間である大川先生(蘭州大学)とは、中国での教師経験や旅行の経験談などをメールで交換しています。彼は、昨年『青蔵鉄道』でチベットのラサへ行きました。そこで、河口慧海という日本の僧侶が輝かしい足跡をチベットの地に残したことを知ることになりました。

 慧海は釈迦の正統な教えが伝えられているチベット仏教を求めて、明治時代に厳しい鎖国政策のチベットに潜入するために、艱難辛苦に耐えて大冒険をしたのです。大川先生は、それを綴った慧海の旅行記の読書感想文を私に教えてくれました。それに触発されて私も『チベット旅行記』を読みましたが、期待に違わぬ力作でした。そこで、大川先生に許可を得て、ここに『読書感想文』を掲載いたします(下のダウンロードをクリックしてください)。

 

慧海旅行記紹介(大川氏).pdf
PDFファイル 1.2 MB

 

 もし、感想文を読んで、慧海の『チベット旅行記』にご興味をお持ちなら、この希有なる名作を、是非、図書館で借りてご一読くださいませ。

 なお、大川豊先生は、教師経験を折に触れてホームページで公開し、またそれをまとめた著書も二冊出版されています。ご興味のある方は以下のURLをご覧くださいませ。

李白の肖像画

李白の「静夜思」を巡る話題

インターネットに次のような漢詩の話題が掲載されています。

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李白の詩の謎を中学生が解いた!

=日中の深い結びつき示す―中国メディア

http://news.livedoor.com/article/detail/3996248/

2009年1月、東京に住む中国出身の中学生・相木将希君が李白の詩「静夜思」の日中版本の違いを自ら「発見」したことが報じられた。このニュースは中国でも報じられ、日中の深い結びつきについて改めて考えさせるものとなった。29日、中国新聞社は、このニュースを取り上げた共同通信社中国語ニュース室長の河野徹氏のコラムを紹介した。「靜夜思」の中国版本は明代以降に改変されたもので日本版本がオリジナルだという。

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李白の「靜夜思」が日中で異なることは、漢詩に興味のある日本人が中国へ行くとすぐに気づくことで、私も知っていました。

じつは、交通大学の初級のテキストに「靜夜思」が記載されている(発音訓練の教材として)。

変更は以下のとおりです。

 

原詩(日本)                 改変(中国)

床前看月光 床前月光を看る       床前月光

疑是地上霜 疑うらくは是れ地上の霜かと。疑是地上霜

挙頭望山月 頭を挙げて山月を望み    举头

低頭思故郷 頭を低れて故郷を思う。   思故

                                     <簡体字で示す>

 なお、この詩は五言絶句で起句・承句・結句で押韻されています。

 原詩と比べて、現代中国の改変された詩では、「看」ーー>「」、「山」ーー>「」と二ヵ所、「明」に変わっています。

 このように「明」に変わったのは明王朝以来だとすれば、当時の学者か宮廷詩人が、明王朝の皇帝にゴマをすって、改変したのではないかとの推測が成り立つが、本当はもっと詩の解釈に関わる複雑な事情があるらしく、「明」への変わり方も時代と共に様々なようです。詳細は、

ーー李白「靜夜思」詩句改変考ーー

 というタイトルで論述されている。あまりにも専門的すぎるので、私には難しくて分かりませんでした。下のURLに掲載されているが、あまり読者にもお勧めできません。https://drive.google.com/file/d/0B1-1OV0NOE92RGVGLUFyckJLTHM/edit?pli=1 

 なお、初級の教師に話したところ、現代中国で流布している「靜夜思」が原詩から改変されていることは知らないそうです。中国人の教師でも、漢詩にたいする知識はさほど無いということです。とすれば、冒頭の記事にあるように、中学生が詩の字句の違いに気付いたのは立派だといえましょう。

 

 

 

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